◎新しい事業に挑戦
モノづくりの中小企業さん、その大半は下請けの仕事です。注文通りの部品やきちんとつくれば良いわけで、販売の心配はありません。だから、楽といえば楽です。が、逆に消費者の顔が見えないので、仕事としてはちょっと物足らないのも事実です。
そんなこともあり、モノづくりの中小企業さんでは、何か自社商品を持ちたいという気持ちは強いようです。先日取材しました板金加工の会社さんでは、下請け以外に新しい事業に挑戦されていました。
◎修理からスタート
それは福祉機器。高齢者や障がい者がお風呂に入るときに使用する浴槽用入浴車でした。昭和63年の創業。多品種・少ロットを中心に、複雑形状品、美観重要品を得意にされています。
6年前から福祉機器事業に参入されました。そのきっかけは、取引先からの相談でした。「介護施設で使われている入浴車の修理をしてもらえないか」という相談でした。
◎商品づくりにも
もともと、ある会社さんがこの浴槽車を製造されていましたが、事業撤退されてしまい、修理をしてもらうところがなくなってしまったのです。介護施設が困っているという話を聞き、社長さんが「それならうちでなんとかしてあげたい」と、手がけることになったそうです。
特許を持っておられるもともとの開発者を探し、特許を使わせて欲しいと懇願。実施権を取得し、修理されるようになりました。その後、修理だけでなく製品も欲しいという要望があり、商品づくりにも乗り出されました。
◎今の設備を活かす
強みは、こちらの工場にはレーザー加工機、パンチプレスなどの製造装置がそろっており、修理や製品を今の設備を活かして出来るということ。社員も一丸となって取り組まれました。
材質を従来のステンレスからアルミに変更、カラーも5種類に増やされました。こちらの浴槽車は高さを自由に調整、浴槽の底にまで低くでき、利用者さんは肩までお風呂にしっかり浸かることが出来ます。
◎ボクも体験
実際、ボクも浴槽車を体験させてもらいました。もちろん、お風呂ではありません。服を着たまま下げてもらうとお尻が地面に着きました。安定感もあり、なかなかの優れものです。
「本業の仕事で時間の余裕ができたとき、部品をまとめてつくり保管してあります。お客様から要望があると、一気に組み立てます」と社長さん。なかなか、効率よく生産されておられました。
◎自社ブランドのモデルケース
浴槽車専門の生産、営業スタッフはおられません。本業の部品加工と兼務で仕事をされています。「今の製造設備を有効活用し、社員も兼務だからなんとか採算に乗ります。単独でこの仕事をしようとすると、赤字ですわ」とおっしゃいます。
中小企業の自社ブランド商品化成功のモデルケースでもあります。今ある経営資源をどう活用するか、そしてワンチャンスをモノにするか、だと思いました。
中小企業を明るくする!ビジネスサクセスジャーナル 日本一明るい経済新聞